では、そうだな、虫の話なら一ヶ月でもできるが、一番よく知られてるのからいくか。

 ヘラクレスカブトムシというのをしっとるかな? 巨大な、世界一のカブトムシである。 世界最大のおおきさだけでないぞ。その雄々しさと野生味あふれるパワーを感じさせる南米の毘虫のスターといってよい。美の代表選手がアグリアス蝶なら力はヘラクレスカブトムシ、といったところだな。

こんなかっこうをしておる。

 わしは、このほどそのへラクレスカブトムシを手に入れるためにコロンビアまで行って来た。その話をしてあげよう。 ヘラクレスカブトムシは、アンデス山脈の高度約1500メートルの樹林帯に生息しておる。 しかし。このあたりは、最近、麻薬などで治安が悪く、山賊も出没し、採集旅行はまず無理、だが、世界中から欲しいといわれる。わしの博物館はまったく個人でやっとるから、ちっとももうからんので、このような需要に応じて商売もしておるのである。 で、数年前から連絡のあるコロンビア人に採集を依頼ておったのじゃ。


 それが1年たってようやく「とれた」という知らせがあった。この時期は観光シーズンでもあり、アマゾン自然科学博物館の仕事も忙しいが、こちらから頼んでおいて、すぐにいかなければ、他の国の収集家にすぐ売られてしまう。とるものもとりあえず、アマゾンから飛んで行ったわけだ。


 マナウスからブラジルの国境の町タパチンガに飛び、タクシーで国境を越えてコロンビア側のレティシアに入った、昔、アマゾンを貧乏旅行していた当時あこがれた当地の一流ホテル「アナコンダ」に泊まった。当時は10ドルで1週間も暮らすという生活じゃったから、一泊50ドルもするこのホテルに自分がいつか泊まることがあるだろうなんぞとは想像もつかんじゃったよ。 といっても今みるとなんの変哲もない、ただTOSHIBA製のクーラーのついてるだけがとりえのホテルじゃがな。 中庭のプールでレティシアの名門の女子高の生徒たちが水泳の授業でキャッキャッと騒いでいたのを見おろしながら朝メシをくったのが唯一の収穫であった。高校生といってもあしこらはグラマーちゃんなのである。

 コロンビアもかってのようにダグラスDC3がよたよた飛んでいるか、とおもったら、最新式のMD83なんてのが飛んでおったのには驚いた。空港の警察官は全員が軽機関銃で武装して、ホテルにも麻薬犬が2匹一組で配置されておったな。この麻薬犬というのはすごいもので、空港では税関と、飛行機に乗り込むタラップの前にも配置されていて、この国もようやく麻薬取り締まりに本腰をいれているのがわかる。実際、この旅でボコタからマイアミに帰路、飛んだときには空港のわしのすぐ後ろに並んでいたコロンビア人が麻薬の運びやだったらしくて、大きな麻薬犬のシェパードがクンクンとその男の側から離れず、彼はたちまち物陰からあらわれた私服警察官に連行されてしまった。


  ヘラクレスカブトムシは、日本のカブトムシと同様に寿命は1年であるが、あんなに大きく成長する。 現在日本にある標本で最木のものは16.8センチ。わしがはかったのだから間違いない。


 南米にはたくさんいるといっても、人口200人ぐらいの3つの村の村人が2遇間しかないシーズンに総出で採集しても200匹以下しかとれん。 集めてくれた知人はカブトムシのたくさん生息する地方(場所は秘密じゃよホホホ)〉に週一回、町から必要な物資を届ける仕事をするかたわら、村人に頼んでいるのです。今回の最大のものは16.4センチだったな。


 うちの博物館の最大のはどのくらいおおきいかって?なに現在展示している標本は15センチしかない。 おおきければまあ、ヒトはびっくりするし、それは博物館のオーナーのわしとしてはまあ、うれしくなくもないが、しかし、博物館の仕事、というのは自然をそのまま見せて驚いていただきたいのであって、サーカスとか手品ではない。15センチ展示しているのはおおきさが榛準的だからじゃ。なにがなんでも最大の榛本を展示するよりもそれぞれの生物の榛準的な大きさを知って貰う方が博物館の仕事としては大切だと思うのじゃ。


 とはいっても私も収集家の一人。大きい標本が欲しいとおもう収集家の気持ちも十分わかるから、そおいうのは高くうることにしておる。なに、博物館だってくわにゃあならん。わしも家族をやしなっておるのだ。


 日本の子どもたちはヘラクレスをみて大きさにびっくりするであろう。だが、もうひとつ知っておいて欲しいのはあれらを採集したのがみんなコロンビアの子どもたちだ、ということだ。


 ヘラクレスは日本のカブトムシ同様、真夜中に大きな木の樹液をなめに集まる。それを村人が懐中電灯で照らして探すのだ。が、オトナではなかなか重くて木登りなんかできん。そこで子どもたちの出番になる。親に「あそこだ、もっと横だ、そう、その上だぞお」などという指示で10歳にみたない子どもたちが懸命に木に登って手で捕まえてくるのだ。 下りるときも大変で、口にビニール袋をくわえて降りてくる。このあたりの村の月収は20ドルぐらいしかない。だからヘラクレスは一家の貴重な現金収入なのだよ。 だからヘラクレスのとれる木は、子どもたちの間でもお互いに秘密だというておったな。


 そう、ヘラクレスはその名前どうり、貧しい村の生活を支える力持ちなのだよ。

 だから最近のカネモチ日本の政治家だの超一流会社社長だのがよく逮捕されるというのがこっちの新聞にもでているが、あれらは、ムシより劣るものだとわしは思うのである。

どうじゃ、日本の一流会社は全部わしのところのヘラクレスカブトムシの置物を社長室に置く、というのは。総会屋の妙な新聞よりよほど、安くしておくぞ。わっはっは

                      (つづく)

もっと話を聞きたいってかい?

うむ、またそのうちにな。ブラジル、特にアマゾンは、まだインターネット接続なんて結構むずかしいのだわ。もうすぐ光ファイバーが届くから、そうしたらAmazonからも続けられるが、そう聞いてもう5年にもなる。だからこのページは一向に進まないのにパソコンがどんどん旧式になって困る。

第一、そんなわけでこのページはどこにも発表してないはずなんだが..よくこれたなあ。あんた。ん?あ、そうか、日本の相棒が公表したのか。うーん、あまり更新できないから、1年以上ほっといたのだけど...ま、いいか。相棒は全然生物学はわからん男だから難しい質問はしないでやってくれ。このインターネット時代に申し訳ないが、難しい質問は手紙にしてくだされ。なに、あと数年の我慢じゃから。

これも、何かの縁だから来年の今頃また覗きにきてくれたら、面白い話をおきかせしよう。ブラジル相手にするには気を長くもたにゃ。

このホームページ、もし生物の先生がみてたら、どうか虫の好きな子どもたちをそだててやってほしい。わしにできることがあったらお手づだいした気持ちはいつでも持っている。

生物の好きな学生はあそびにおいで。歓迎する。いつでも研究員にしてあげるよ、もっとも無給だけど...ではな、バイバイよ..

あ、帰る前にコマーシャルをみなさい。わすれるでないよ。これでAmazonタワーの建設費用を稼いでおるのだから。

しっかりブラジル・アマゾンにいくひとにあったら、「アマゾン博物館で買ってきて」とたのむのじゃぞ(^^)

1998/6/1 東京にて